母は元々精神的に不安定なところがあり、私が幼いころから精神科に通い詰め、日々多量の薬(向精神薬など)を飲んで生活していた。
母が多量の薬を飲むことは、私にとって日常であったし、妹が生まれる以前は一人で留守番をすることも多かったから、カウンセリングなどにも通っていたんだろうなと思う。
中学生の頃
家庭にはイエスキリストやマリアの宗教画や水晶などが当たり前のように飾られていた。家に友人を呼ぶということもほとんどない年頃であったし、毎日の部活でヘトヘトであったから家の中のことはあまり気にしていなかった。その頃には自分の部屋も用意されていて、勉強熱心だった私は毎日のように勉強をしていた。
中3の秋だった。
母が夕食時に言う、「夢で神様に会った」と。念願叶ったといわんばかりの喜びようで静かに興奮しているような様子であったが、父は明らかに相手にせず適当にあしらい半ば無視していた。
その翌日から、姿が変わった。
「私は神様に選ばれた」と言い始めた。父も私も「またいつもの、か」くらいに聞き流していた。
学習塾には通わず、高校受験を進研ゼミと学校の授業だけで乗り越えようと考えていたため、「模試」というものを初めて受ける時期になる。学校での成績はトップだとしても、自分の学力には自信がなく明らかに緊張は感じていた。
「最後にココの暗記箇所だけ復習して寝よう」そう決心して単語帳をめくり始めたとき、
ドンッ
と急激に母親が私の部屋に押し入ってきた。
「をふ(私)、ママは殺されてしまうかもしれない、助けて、一緒に呪文を唱えて!」と泣き叫びながら、私にすがってくる。邪険にしながら振り払っていると、何かが乗りうつったようにベランダの窓を開け、「悪魔に殺される!私が殺されてもいいというのか!頼むから一緒に唱えて!」と泣き叫ぶ。
忘れもしない。「キ コウ ム ク シン キ リキ ゾン」の呪文。
妹も私の部屋に入ってきて泣いている。父親はベランダへ向かおうとする母を止めるのに必死である。私はどうするべきなのか。何もわからず、妹を布団の中に入れ、妹が何も聞かないように、妹に何も見えないように、布団の上から耳を抑えるようにした。
「私が死んでもいいのか!最低な娘だ!あんたなんかいなくなればいいんだ!」
と思いつくだけの罵声を浴びせられる。呪文を唱えたら、何か悪いものが自分の中に取り込まれてしまうような気がして、かたくなに口をつぐみながら妹の耳をふさぐ私。
「一緒に唱えて!悪魔に殺される!!」と言いながら、びりびりに破かれてしまう羽毛布団。
普通の力で扱っていれば、破けるようなものではなかった。小6の時に軽く平手打ちを食らっただけでかなり痛かった時ぶりに、大人の力を実感させられたような気がした。
ああ、なんで。
私は悪いことしているのか?
初めての模試、頑張りたいって思っていたんだけどなあ。
びりびりに破かれた私の羽毛布団は使い物にならず、隣の兄の部屋で妹共に寝ることになった。。妹は何もなかったかのように、私の腕の中ですやすやと寝ていた。今日の記憶を妹が将来まで覚えていませんように。そんなことを願いながら私も疲れて寝てしまっていた。
兄はすでに大学1年で寮生活をしていたため、母親の急性期に触れてはいない。
翌日。何もなかったかのように朝食を食べ、模試会場まで父親に送迎してもらった。
私はその日知った。模試ってこんなもんか。
続く


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